キレート鉄に求めるのは初速

キレート鉄に求めるのは初速

栄養療法を行うと必ず出会うのが貧血鉄欠乏であり、ダイエットボディメイクスポーツパフォーマンス向上をはじめにあらゆる目的に対して影響を及ぼします。

 

しかし、鉄は栄養療法において「取り扱いの難しい栄養素」とされています。

 

 

それは鉄の持つ特異な吸収システムによるものです。

 

慢性炎症の発生時には鉄吸収が阻害されてしまうため、貧血鉄欠乏の改善には「まず炎症収束」が欠かせないのです。

 

様々な検査項目や問診から炎症状態を推察し、「鉄をサプリで入れよう!」となった時に用いるのがキレート鉄です。

 

アミノ酸や有機酸によってキレート結合された鉄は吸収率が高く、より迅速な効果が期待されます。

 

ただし栄養素はすべて過剰にも気をつけなければいけません。

 

特に鉄は過剰にも注意が必要です。

「キレート鉄は短期で効果があるのなら、長く続けるものではない」

これが持論です。

 

2015年エジプトで150(Hb7.0-10.9g/L未満,フェリチン12mg/dl未満)の妊婦を対象として行われた研究があります(Ghada Abdel Fattah Abdel Moety et al. Eur J Obstet Gynecol Reprod Biol. 2017 Mar)

 

キレート鉄15mg11回摂取する群

非ヘム鉄(フマル酸第一鉄)115mg11回摂取する群

 

この2群に分け、4.8.12週目に血清プロファイルを比較しました。

 

WHOは胎児と母親双方の健康のために、妊娠中のヘモグロビン(Hb)を最低11.0に保つことを推奨しています。

 

▪︎ベースライン

Hb

キレート鉄(IAAC) 9.37

非ヘム鉄(FF) 9.41

フェリチン

IAAC群 10.37

FF群 10.42

となっていました。

 

 

▪︎4週目

Hb

キレート鉄(IAAC) 10.14

非ヘム鉄(FF) 9.73

フェリチン

IAAC群 13.5

FF群 11.34

まずはヘモグロビンに差が出始めます。

 

▪︎8週目

Hb

キレート鉄(IAAC) 10.88

非ヘム鉄(FF) 10.05

フェリチン

IAAC群 31.41

FF群 17.54

8週目ではかなりフェリチンに差が出始めました。

 

▪︎12週目

Hb

キレート鉄(IAAC) 10.98

非ヘム鉄(FF) 10.84

フェリチン

IAAC群 40.3

FF群 38.48

しかし12週目にはヘモグロビン、フェリチン共にほぼ横並びに、両群共にヘモグロビンは11近くまで回復しました。

 

キレート鉄は胃腸に大きな不快感を与えづらく、バイオアベイラビリティー(生体利用率)が高いことが示されています。

 

ですが、特筆すべきはあくまで「効きの速さ」なのです。

 

栄養療法における鉄の充足で大切なのは「非ヘム鉄の吸収率を上げること」です。

 

実は動物性食品に含まれる鉄もヘム鉄ではなく、非ヘム鉄が多いんですよね。

 

「キレート鉄は慢性炎症がないであろう時に短期(1-2ヶ月)でのみ用いる」

 

いつもこう伝えているのはキレート鉄の強みはあくまで「初速」だからです。

 

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