【肺水腫と栄養の関係】
肺水腫とは酸素と二酸化炭素のガス交換を行う部位である肺胞(alveoli)に血液の液体成分がしみ出している状態であり、ガス交換の効率が低下し、息苦しさ、喘息、呼吸困難などが現れます。
肺水腫には心原性肺水腫と非心原性肺水腫がありますが、発生する主なメカニズムとして…
①血管内圧の上昇
②血漿膠質浸透圧の低下
③血管透過性の亢進
上記3つが該当し、これが重なりあって肺水腫の発生に繋がると考えられています。
そしてこの3つは栄養状態によってかなり左右されているため、栄養状態を改善することで肺水腫の予防や予後を良好にできる可能性があるのです。
②は血清タンパクであるアルブミンの低下によって引き起こされます。
アルブミンは様々な栄養素・薬剤・ホルモンなどと結合して運搬することを役割の1つとしていますが、血管内に水分を保持させる役割も持っています。
アルブミンは肝臓で生成されるタンパク質であり、栄養状態や炎症状態を示すマーカーにもなっています。
低栄養や慢性炎症によって肝臓での生成能力が低下し、低アルブミン血症が起こります。
アルブミン値が低くなり血管内に水分を保持できなくなることで肺胞内に浸潤し、肺水腫が発生します。
③は炎症の発生に合わせて分泌されるロイコトリエン、ニューロペプチドY、サイトカインなどが血管透過性を亢進させます。
この血管透過性亢進は短期で見れば好中球の浸潤を誘導して治療を促進しますが、慢性化することで血管透過性が亢進して血液の液体成分が肺胞に流れ込み肺水腫を引き起こします。
つまり②③共に栄養状態と炎症状態の悪化によって引き起こされてしまうと言えるのです。
(①にも関係していますが)
ARDS(急性呼吸促迫症候群=非心原性肺水腫)の発生率は低アルブミン血症の患者ほど高く、数値の低下に伴い重症度が増すとしている研究もあります。
炎症の収束、栄養状態の改善は万病の予防にもなり得ることがここからも分かります。
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