私達はストレスを受けると視床下部はCRH(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)を分泌し、これが下垂体に達し、ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)が分泌され、それが副腎に達するとコルチゾールが分泌され、いわゆる「闘争か逃走」反応が起こります。
このストレスを受けた際に反応するシステムをHPA軸というんですが、HPA軸は脳の海馬からもフィードバックを受けています。
海馬にはグルココルチコイドレセプターがあり、CRHの分泌を抑え、血中コルチゾール濃度を抑えるというフィードバックループを形成してHPA軸を制御しています。
ですが、海馬は長期的にコルチゾールに晒されるとその神経細胞が萎縮してしまうことが分かっています。
繰り返されるコルチゾールの過剰な分泌
コルチゾール基礎レベルの増加
その両方が海馬の萎縮を引き起こし、学習や記憶という能力の低下に繋がる事が考えられています。(※1 Lupien SJ, et al. Nat Neurosci. 1998.)
海馬は短期記憶などを司るだけでなく、”場所細胞”の存在により空間認識にも関与する事が考えられています。
外界からの情報、つまり視覚、聴覚が遮断された状況でも前庭感覚由来の情報により場所細胞の活動は維持され、空間認識を行うとも考えられており、海馬と前庭には強い繋がりがあると考えられています。(※2 Smith PF, et al. Prog Neurobiol. 2005.),(※3 Brandt T, et al. Brain. 2005.)
逆を考えれば、海馬の萎縮に繋がるような食生活習慣(精製糖を好み、血糖値スパイクの多かった方)はエクササイズ指導を行なっていても自己定位が上手く出来ていないなと感じていました。
もちろん、今までの運動経験にもよりますけどね。
そして、片足立位でサーフェスを変化させたり、リアクティブな姿勢制御が求められるようなタスクを与え、負荷を漸進させていくバランストレーニングは前庭を刺激し、それに関する脳領域である海馬を刺激するのか、記憶や空間認知を改善するという結果も見られます(※4 Ann-Kathrin Rogge,er al 2017)
ただこの研究では、有酸素運動による心肺機能の向上は認知機能の向上のために必要ではないと思われる、と書かれています。
ですが、それはこの試験で採用された有酸素運動がサイクルエルゴメーターだからではないかなと思います。
外をジョギング、ランニングであれば結果は違ったんじゃないかなと。
加速、オプティックフローが起こりますから、前庭が刺激されることにより空間認知などの向上も期待できたのではないかなと思います。
脳卒中後の患者ではオプティックフローの受容によりバランスや歩行の改善が起こり得ます(※5 Kang HK, et al. Clin Rehabil. 2012.)
外の散歩やジョギング、大事。
話を海馬に戻して、超重要ミネラル亜鉛は海馬に高濃度で存在しており、臓器の回復を狙う際はその局在濃度に応じた栄養素を摂る事が1つのポイントだと考えられています。
また亜鉛はコルチゾールに対して分泌抑制効果も持っており(※6 Brandão-Neto J, et al. Biol Trace Elem)、副腎ケア、海馬の萎縮を予防して認知機能や空間認識能力を維持するためにも欠かせない栄養素ですね。
歳を重ねる毎に健康であること、働けることの有難さを痛感します。
最近ではヘルスケアとして、有酸素運動の見方がかなり変わってきています。
どうしても自身のトレーニングはストレングス寄りになりがちですが、今年は外をジョギングしたり、食事に気を使い、ストレスマネジメントも行い、飛躍の年にしたいなと思います。
※1 Cortisol levels during human aging predict hippocampal atrophy and memory deficits.
※2 The effects of vestibular lesions on hippocampal function in rats.
※3 Vestibular loss causes hippocampal atrophy and impaired spatial memory in humans.
※4 Balance training improves memory and spatial cognition in healthy adults
※5 Effects of treadmill training with optic flow on balance and gait in individuals following stroke: randomized controlled trials.
※6 Zinc acutely and temporarily inhibits adrenal cortisol secretion in humans.
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