【健康は口から】
セミナーでも常々お話している慢性炎症の発生源は腸、細胞膜、歯、咽頭です。
慢性炎症はあらゆる未病や病気の根底に存在していることから、炎症の制御はヘルスケアにおいて重要になります。
腸と細胞膜で起こる炎症は栄養療法によって概ね制御が可能です。
しかし、歯と咽頭は栄養だけではどうにもならない部位になります。
栄養療法の世界では上咽頭炎が慢性疲労の原因になったり、自己免疫疾患を増悪させたりすることが知られています。
歯で起こる炎症は上咽頭ほど分かりやすくはありませんが、緩やかに、しかし確実に健康を害していきます。
代表的なものはアルツハイマー型認知症(AD)です。
近年では歯周病がADの強いリスクファクターであることが知られています。
それ以外にも歯周病は歯で起こる慢性炎症として鉄由来の不調(貧血・鉄欠乏)にも関与します。
栄養療法では鉄欠乏を推察する血液検査項目としてフェリチンが用いられますが、鉄の充足に対してのみ反応するわけではありません。
フェリチンは炎症によっても制御を受け、炎症により血清フェリチン値は上昇する傾向があります。
厄介なことに炎症が起こるとフェリチンは上昇しますが、鉄の吸収が阻害されてしまい、鉄欠乏を増悪させるのです。
歯周病も炎症としてフェリチンを上昇させるのでしょうか。
38名の歯周病を有する女性(閉経後)が、歯周病とフェリチンの関係を調べるために研究へ参加しました。
1ヶ月に渡る非外科的歯周治療(歯垢除去など)、デンタルケア指導などを行うと血清フェリチンレベルは108.55ng/ml→98.28ng/mへと低下しました。(Masoumeh Faramarzi et al.J Dent Res Dent Clin Dent Prospects.2021 Summer)
これは歯周組織で起きる炎症が収束したことによってフェリチン上昇が改善されたことを意味します。
生涯の健康のために、慢性疲労の寛解のために、エチケットのためにデンタルケアは欠かせないと思うのです。